たかゆうの読書日記

本が好きです。読んだ本を中心に、映画・マンガ・テレビなどについても言及できればと思います。

『おおかみこどもの雨と雪』の花はめちゃくちゃ精神強い。母性の塊みたいな人だ

個人的にものすごく大切で大好きな作品。

映画『おおかみこどもの雨と雪』が金曜ロードショーで放送されて、再見しました。以下、ネタバレしながらの感想になります。

おおかみこどもの雨と雪(本編1枚+特典ディスクDVD1枚)

おおかみこどもの雨と雪(本編1枚+特典ディスクDVD1枚)

19歳の大学生花は、あるときおおかみおとこと運命的な恋に落ち、やがて雪と雨という姉弟が誕生する。彼らは、人間とおおかみの両方の血を引くおおかみこどもとしてこの世に生まれたのだが、そのことは誰にも知られてはならなかった。人目を忍びながらも家族四人で仲良く都会の一角で暮らしていたが、ある日、一家を不幸が襲い……。

シネマトゥデイより

花はめちゃくちゃ強い人

おおかみこどもの雨と雪』は、花が恋をして、子どもを産んで、子どもを育てていく話。

子どもたちが誕生する前から、花にはいくつもの試練が襲いかかります。

  • 愛する人が、人間ではなかった。そこで愛を試される。
  • 愛する夫が亡くなり、シングルマザーでの子育てが始まる。
  • 2人の子ども「雨」と「雪」は、オオカミ人間と人間のハーフ。誰にも相談できない悩みを抱えながら、人間社会でどう生活していけるかが問われる。

花は、雨と雪のために都会ではなく田舎暮らしを選びます。自給自足の生活を目指しますが、食べ物を作る上での苦労があったり、そう簡単にはいきません。

花はおっとりしていてたくさん失敗します。田舎へ移住するのも正しい選択だったのかよく分からない。シングルマザーで生きていくだけでも大変なのに、子どもたちが人間社会と適合できるかが不明。

だけど、花はまったく悲観的にならない。

花ってめちゃくちゃ強い人ですよ。僕だったら、毎晩泣くよ。オオカミ男なんかと結婚するんじゃなかった、子どもを産むんじゃなかったと後悔する。

花は、母性の塊ですべてを子どもに捧げている。達観している。親として始めから成熟している。親だって徐々に成長していくものなのに、すでに完成形。これは幻想と言っていいレベルで、明らかに意図的なもの。細田監督は、花に理想の母親像を託したのかなと。

花の名前の由来は?

おおかみ男である彼がまだ生きているとき、名前の由来を聞かれます。

花が生まれたときに、庭に自然のコスモスが咲いていた。それを見て父親が、名付けたそうです。

花は彼にこう伝えます。

「花のように笑顔を絶やさない子に育つなるように。辛いときとか苦しいときにとりあえずでも無理矢理にでも笑っていろって。そうしたら、たいてい乗り越えられるからって」

花の生き方がここに現れてると言えます。

物語の後半には、花が泣き言を吐き出す場面があって、おそらく花の後悔とか葛藤を集約させようとしたのだと思います。

ただし、花にはもっと泣きじゃくってほしかった。演出過剰ってくらいに号泣させてほしかった。花はこれまで負の感情を見せなかったから、そこまで大袈裟にしてもトゥマッチにはならなかったと思いました。ちょっと物足りなかった。

一緒には住めない、随所に感じさせる演出

おおかみこどもの雨と雪』には、親子のハッピーな場面がたくさんあるんですけど、ずっと不穏さが漂っています。

子どもの自立がテーマにあって、花と子どもたちは一緒にはいられない、決定的な別れがやってくることが前提になっているから、そんな予兆がいろいろな場面で出てくるんですね。

本作屈指の名場面といえば、親子3人が雪ではしゃぐところでしょう。雪の上を滑っていって、疾走感があって、みんな笑顔で、見ているだけで気持ちいい! ホント何度も見返したいシーンです。

だけどキラキラしていながら不穏な感じが横たわっている。まず、花と子どもたちとでは、身体能力が違うんですね。雨と雪は獣となってビュンビュン走っていく。

さらにここで決定的なことが起こります。雨が鳥を捕まえようとして溺れてしまうのです。最終的には助かるのですが、雨の野生が覚醒することでの危うさが示されている。

人間の母親と、狼男の血を受け継ぐ子どもたち、この親子はやはり一緒には住めないのだという現実が突きつけられていきます。

”陰”を象徴する姉弟ゲンカ

雪原ではしゃぐ場面が3人の”陽”の関係をあらわすピークだったとすると、”陰”を象徴するのが、雪と雨の姉弟ゲンカとなるでしょう。

雨が家の中を引っ掻き回して、2人とも傷だらけになる。子どものころのケンカとはもはやレベルが違う。全力でぶつかり合えば、死すらあり得ることがはっきり分かります。雨はいつのまにか大きく成長していた。母親である花にとっては、早すぎる子離れになっていくんですね。

やがて雨は、獣たちの世界で住むことを決めます。それは人間にとっては理解できない世界。だけど、花は親として雨の選択を尊重します。まさに雨が親から巣立ちをして、花は子離れしたんだなと。

さいごに

ほかにも、雪と良平との関係も、思春期の女の子にとってショックな展開もあって、雪の視点からもいろいろと感じるところはあるなと。

見る人によっても共感ポイントが変わるので、自分のライフステージに変化がある度に、いろんな発見が出てきそう。