超ド級のSF作品! もう圧倒的な世界観で、グイグイ読ませます。 小説は、以下の三部作となっています。
- 『三体』
- 『三体Ⅱ 黒暗森林(こくあんしんりん)』
- 『三体Ⅲ 死神永生(ししんえいせい)』
この三部作の見どころを、紹介します。
※Netflixで2024年3月21日から放送開始されます!
- 『三体』シリーズとは?
- 『三体』シリーズの魅力は?【ネタバレなし】
- 『三体』
- 『三体Ⅱ 黒暗森林』
- 『三体Ⅲ 死神永生』
- Netflixでドラマ化
- 中国SFが隆盛を誇っている背景
- このタイミングで読むべきSF作品
『三体』シリーズとは?
『三体』は、中国の作家・劉慈欣(りゅう じきん)によるSF作品で、2006年から中国のSF雑誌に連載されました。
大きな話題を集めたのが、英訳版が発売されて、2015年にヒューゴー賞を受賞したタイミング。ヒューゴー賞はSFの最大の賞で、アジア人として初めて受賞したんですね。全世界で2,900万部売れたといわれています。
三体とは、万有引力で引かれ合う3つの天体が、宇宙にあるときにどのように動くのか? という天体物理学のなかで三体問題が由来です。三体問題がカギになりながら、物語は壮大な展開を見せていきます。
『三体』シリーズの魅力は?【ネタバレなし】
『三体』第一部の冒頭は、史実をベースにしながら、父親の処刑が描かれます。ここだけでただならぬ作品、と思わせてくれる。まだSF要素なんてないのに。
そして、ここから想像力を刺激する展開が待っています。代表的なのは、三体というVRゲーム。歴史の偉人たちが登場し、灼熱地獄や極寒地獄にさらされてしまう。書いていて思ったけど、これまったくおもしろく伝えれない…。それなのに小説で読むと、VRゲームの場面だけでグイグイ読めてしまうんですよね。
第二部は圧倒的にスケールのでかいエンタメ展開。地球を代表する4人が、頭脳戦を行います。こんなの読んだことない。
そして第三部の完結編はどうなるのかと思いきや、軽々と予想を越えてきます。
なんでしょう。SFというニッチとも思えるジャンルなのに、スケールがでかく物理学の知識も入っているのに、それでもエンタメとして成立している。こういう小説体験ができるのが幸せ。
『三体』
三部作の第1作め。
冒頭から公開処刑のシーンからはじまり、ノンストップで読み切りたいと思わせる内容になっています。本作だけでもかなりクオリティが高く、壮大さを感じられます。
『三体』主な登場人物
- 葉哲泰(イエ・ジョータイ)…理論物理学者で大学教授。
- 葉文潔(イエ・ウェンジエ)…天体物理学者。葉哲泰の娘。楊冬(ヤン・ドン)の母親。
- 楊冬(ヤン・ドン)…宇宙理論研究者。葉文潔と楊衛寧の娘。
- 楊衛寧(ヤン・ウェイニン )…紅岸基地の最高技術責任者。葉哲泰の元教え子。楊冬(ヤン・ドン)の父親。
- 汪淼(ワン・ミャオ)…ナノマテリアル開発者。
- 史強(シー・チアン)…テロ対策の警察官。
『三体』あらすじ・見どころ
物理学者である葉哲泰(イエ・ジョータイ)は、文化大革命の糾弾集会で公開処刑されます。娘である葉文潔(イエ・ウェンジエ)の目の前で。しかも父の死は、母の密告によるもの。
葉文潔の人類への絶望が、この壮大な物語を広げていきます。葉文潔は、巨大パラボラアンテナを備えた中国の秘密基地に配属されて、地球文明の情報を宇宙に発信し続けることに。
一方、優秀な物理学者の自殺が多発しているという事件が起こります。そこで、研究者・汪淼(ワン・ミャオ)と、テロ対策の警察官・史強(シー・チアン)のコンビで、真相を突き止めることに乗り出します。
『三体』ネタバレ
汪淼は、事件の真相に迫るとされた「VRゲーム」をプレイすることで、地球三体協会の存在をたどり着きます。三体協会は、あの葉文潔が関係している団体。そう、葉文潔が送信していた信号を、三体文明の宇宙人たちが傍受していたのです。三体星人を地球に招き入れて、人類を一掃しようと画策していたことが判明します。
三体星人の星では、3つの太陽が不規則な軌道をとっていて、寒暖差が激しい。生きていくのだけで、めちゃくちゃ過酷。だから移住先を探していたんですね。地球はうってつけの移住先だったわけです。
ただ三体星人がたどり着けるのは、400年後。それまで人類の進化を妨げるために、「智子」というナノマシンを地球に送り込みます。智子は、人類のすべての情報を収集でき、物理学の発展を止めるためのナノマシン。
ここで人類VS三体星人の戦いの火蓋が切って落とされます。
『三体Ⅱ 黒暗森林』
第2作目。3部作のなかでは最もエンタメ性が高いと思います。
三体星人と人類という構図が明確なため、わかりやすいんですね。熱い攻防を体験してほしいです。
『三体Ⅱ 黒暗森林』主な登場人物
- 羅輯(ルオ・ジー)…元天文学者。大学教授。
- 史強(シー・チアン)…元警官。羅輯の警護担当。
- 葉文潔(イエ・ウェンジェ)…地球三体協会の指導者。
- フレデリック・タイラー…元米国国防長官。
- マニュアル・レイ・ディアス…ベネズエラ大統領。
- ビル・ハインズ…科学者。妻の山杉恵子と共同開発。
『三体Ⅱ 黒暗森林』あらすじ・見どころ
人類の作戦は、智子によってすべて三体星人に筒抜け。
ただ三体星人には、弱点がありました。三体星人は、脳で考えていることを電磁波で伝えることができるため、頭のなかで考えることは読むことができないのです。
そこで人類が考えたのが面壁作戦。これは、人類最高峰の4人を選抜して、彼らの頭のなかだけで三体星人の侵略を阻止する計略を練ることに。三体星人は、智子を使いながら、どんな計略かを探っていきます。
人類の存亡をかけた頭脳戦が繰り広げられます。
注目すべきは、面壁者の1人である羅輯(ルオ・ジー)で、平凡そうな人物。冷凍冬眠を駆使しながら、三体星人への計略を考えていきます。とにかくエンタメ感が増すのが、この第二部です。
『三体Ⅱ 黒暗森林』ネタバレ
4人の面壁者たちの企みをまとめていきます。
フレデリック・タイラー(元米国国防長官)
蚊群編隊計画を画策。スーパー水爆による特攻プランで、地球艦隊に対する攻撃および消滅を考えていました。
マニュアル・レイ・ディアス(現職のベネズエラ大統領)
水星連鎖反応計画を画策していました。すべての恒星型水素爆弾を水星に配備し、ひぎかねを引く準備を整えたあと、それを盾にして三体世界に降伏を強要しようとしていました。
ビル・ハインズ
妻の山杉恵子と共同開発でノーベル賞ノミネート。精神アップグレード計画を画策し、洗脳装置「精神印章」で対抗しようとしていました。
羅輯(ルオ・ジー)
水滴と名付けられた探査機を捕獲しようと、人類は2000隻以上送り込むが、惨敗に終わりました。これは後に「終末決戦」といわれます。
そして、羅輯(ルオ・ジー)は、三体星人に立ち向かう端緒として、フェルミのパラドックスを考えていきます。フェルミのパラドックスとは、地球外生命体がいるはずなのに、人類が遭遇しないパラドックスのこと。
羅輯(ルオ・ジー)は、暗黒森林理論に行き着くのです。相互のコミュニケーションがない、進化スピードが読めない、この2つの条件がある限り、ほかの生命を発見したら、できることは相手より早く引き金を引くことだけ。
コミュニケーションの不在は猜疑心の連鎖を産む。貧弱な技術力しかないような種族であっても、時として爆発的な進化を遂げることもある。宇宙の物質の総量は一定だから、生き残るためにはそれを独占しなくてはならず、異なる知的生命体を発見した際に、まず最初にすべきことは対象を全て滅ぼしてしまうことなのである。
ルオジーは三体星人と交渉して、自分の身に何か起こったら、三体世界の座標が全宇宙に送信されると脅します。これにより、人類は巨大な重力波アンテナを地球に構築。抑止力により均衡が保たれたのです。
『三体Ⅲ 死神永生』
三体、完結編!
1作目、2作目で、これをどう超えるのか、蛇足ではないかと思ったものの、まったく杞憂でした。すこぶる面白く、スケールはとんでもないことになっていき、この小説体験は何者にも代えがたい。圧巻です。
『三体Ⅲ 死神永生』主な登場人物
- 程心(チェン・シン)…航空宇宙エンジニア。
- 艾AA(アイ・エイエイ)…天文学の博士課程に在学中の大学院生。
- 雲天明(ユン・ティエンミン)…程心の大学時代の同級生。階梯計画の任務執行者。
- トマス・ウェイド…元・国連惑星防衛理事会戦略情報局長官。
- 関一帆(グァン・イーファン)…宇宙論研究者。
- 羅輯(ルオ・ジー)…元・面壁者。執剣者。
- 智子(ヂーヅー/ともこ)…智子に制御される女性型ロボット。
『三体Ⅲ 死神永生』あらすじ・見どころ
人類と三体星人との戦いは終わりかと思いきや…。
完結編は、15世紀のコンスタンティノープルから始まります。
美人女性エンジニア・程心(チェンシン) が提案した階梯計画が発動。階梯計画は、三体世界に人類を送り込む計画です。実現不能と思われていましたが、程心はあるアイデアを取り入れて、実行に移してしまいます。
これだけでは終わりません。恐ろしいほどのデカいスケールで物語が展開。完結編にふさわしい内容になっています。
『三体Ⅲ 死神永生』ネタバレ
宇宙船の航路上に燃料を配置して、水爆の力で、移動していくという荒業。送り込まれたのは、程心に恋心を寄せる雲天明。のちのち、雲天明は100を超えるおとぎ話を創作するのですが、そこに機密情報を含んだ3つのおとぎ話を混ぜていたというのも好きな設定でした。あと程心に星をプレゼントし、宇宙をプレゼントしたというのも壮大なロマンですよね。
そして程心は、羅輯(ルオ・ジー)から執剣者2代目として引き継ぎます。
名刺サイズの紙がカギを握る後半の広がりがすさまじい。天文学者のAAAは、元気で小気味がよくて、かなり好きなキャラです。
想像を絶する展開をどう畳むのか。劉慈欣の手腕を感じさせる完結編。間違いないおもしろさです!
Netflixでドラマ化
『三体』は2015年にヒューゴー賞を受賞しています。アジアで初の栄誉でした。そしてNetflixでドラマ化が決まっており、『ゲーム・オブ・スローンズ』のデビッド・ベニオフ、さらにはライアン・ジョンソン監督が制作を担当しています。
超豪華!どのような映像になるのか、ものすごく楽しみです。
中国SFが隆盛を誇っている背景
中国SFはかなり注目が高くなっていますが、これは政府がSFを産業とするべく計画されたもの。
北京にSF都市を作るとか、2021年末を目処にSFの遊園地を作る計画があるそうです。科学を信頼する、発展する期待がベースにあって、SF作品が生まれて、受け入れられているわけです。
このタイミングで読むべきSF作品
間違いなく歴史に残るSF作品になった『三体』。完結したこのタイミングで読んでおきたい作品になっていると思います!