たかゆうの読書日記

本が好きです。読んだ本を中心に、映画・マンガ・テレビなどについても言及できればと思います。

マンガ『ジパング』あらすじ・ネタバレ解説!ストーリー時系列で太平洋戦争を学ぶ

太平洋戦争をテーマにした作品は数多いが、マンガ作品のなかで外せないのが『ジパング』だ。

『ジパング』はかわぐちかいじによる描かれ、9年3ヵ月に渡ってモーニング誌上で連載されていた。全43巻。

『ジパング』のストーリーを時系列で追いながら、ネタバレありで太平洋戦争を学んでみようと思います。

かわぐちかいじの傑作『沈黙の艦隊』の徹底解説はこちらから!

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『ジパング』主な登場人物

角松洋介

副長兼船務長/二佐。熱血漢で何より人命を尊ぶ性格から、草加を救出する。

草加拓海

海軍少佐/通信科情報参謀。歴史上ミッドウェーで戦死するはずだったが、角松にその命を救われる。

梅津三郎

艦長/一佐。昼行灯(ひるあんどん)と揶揄されるも、実は肝の据わった男。

菊池雅行

砲雷長/三佐。冷静沈着な理論派。角松と防大の同期で、 歴史に手を加えてしまうことを恐れる。

尾栗康平

航海長/三佐。菊池とは対照的に自衛の為の武力行使を主張。角松と防大の同期。

『ジパング』ストーリー時系列(あらすじ・ネタバレ)

『ジパング』のストーリーを主な内容からたどっていきます。

みらい漂着

自衛隊のイージス艦「みらい」が突如、未知の自然現象に巻き込まれる。目の前には戦艦大和が…。ここは、ミッドウェー海戦の最中に投げ出されていた。タイムスリップしたのに気づくのが、満月が半月になっていること。この月の描写が、夢まぼろしな感覚があってすばらしい。この後に、日本海軍の草加拓海を助けてしまうことで、未来に大きな影響を与えることになる。

史実では…

ミッドウェー海戦では、長門、陸奥、扶桑、山城、伊勢、日向といった主力艦隊が戦場へ。山本五十六が指揮していた。魔の7時23分に、空母の加賀、蒼龍、赤城が上空からの逆落としにあって、4隻もの空母を失った。

ガダルカナル島編

みらいはマレー半島で無事に補給を完了する。日米合わせて2万人の犠牲を出したガダルカナルの攻防を防ぐため、みらいは歴史に介入することを決意し、サジタリウス作戦を決行する。アメリカ軍の補給物質にハープーンを打ち込み、威嚇して撤退を促した。日本軍にも働きかけ、山本五十六は撤退を決める。だが、陸軍は継続を決定したという歴史は変えることができなかった…。

史実では…

1942年、2500名ほどで日本軍が飛行場設営をしていた。8月7日、米海兵隊1万8,000名が上陸を敢行し、飛行場を占領。そして、飛行場奪還に現れた日本軍を、アメリカ軍は撃退。日本兵はわずか900人…。食糧もなく、全滅した。このとき指揮していたのが、陸軍屈指の精鋭と言われた一木支隊。

8月8日、第一次ソロモン海戦が起こる。ガダルカナル島への米上陸部隊を警護中のアメリカ・豪の連合艦隊を、日本海軍の第8艦隊が強襲。三川軍一中将は米空母の反撃を恐れて、戦線離脱を指示した。本来の目標であった米上陸部隊や輸送船団に対する攻撃は実行できていない。

ワスプ編

横須賀に向かう途上で、「みらい」が米機動隊に攻撃を受けて、ワスプを撃沈。

史実では…

米空母ワスプは、日本潜水艦「伊19号」に撃沈されている。

満州帝国動乱編

中国戦線の縮小を草加が画策。石原莞爾と草加が出会う。そして草加は、満州国皇帝・溥儀の暗殺を行う。角松は溥儀暗殺を止めようとするが失敗。

史実では…

石原莞爾は、著書『最終戦争論』で兵器の進歩による戦争形態の変化は、核の出現がもたらした世界のバランスを予言した。奇才と評価される一方で、満州事変の画策者として戦犯と扱われることもある。満州事変は王道楽土、五族協和の精神がまったく理解されなかった。石原莞爾は、日米開戦を避けるべきと叫び続けたが、東条との確執により、陸軍から排除された。

アリューシャン編

ミッドウェーの敗戦によって戦略的価値をなくしたキスカ・アッツの日本軍を救うために、みらいは北上する。濃霧でノースカロライナを中心とした米艦隊と戦闘が行われる。みらいは、キスカ・アッツの日本軍兵4000名を救出する。

史実では…

キスカ・アッツへの米軍反攻作戦は、半年以上後の1943年5月12日に起こっている。キスカ・アッツはミッドウェー海戦を秘匿する目的で占領していた。アッツ島は日本軍は玉砕。キスカ島は濃霧にまぎれて日本軍は撤退。キスカの奇跡と呼ばれた。

ヒトラー暗殺計画編

草加は、欧州戦線の早期終結も画策していた。草加と同じ思いだった山本からの命を受けて、津田がA26でベルリンへ。津田は、反ヒトラーを掲げるシュタイナー大佐の死を賭した協力により、ヒトラー謁見にこぎつける。ゲッベルスは「わたしが欲しいのは物語だ」と言い放ち、津田を認める。

ヒトラーは「強いものが自分の意志を主張する!これは自然の法なのだ世界は常に変わらずその法則も不変なのだ」と発言。津田は、ベルヒテスガーデンでヒトラー暗殺に失敗して死亡した。

草加はデンマークでポーランド人の物理学者・クリューゲ博士と接触し、ウラン235を入手した。草加のジパング構想が明らかに。草加はアメリカより先に原子爆弾を開発するつもりだった。草加は満州へ向かい、濃縮ウランを石原莞爾に託した。倉田万作博士に原子爆弾の開発を担うことに。

草加は、「国家としての自立と自由を失った彼らの日本を憎んでいる」「矛盾に満ちた彼らの未来をそしてそれを受け入れている彼らを憎む!」と、ジパング構想の実現を心に誓う。

史実では…

ヒトラー暗殺は少なくとも43回企てられた。最初の暗殺計画は、第2次大戦勃発前の1938年にベック陸軍参謀総長を中心に計画された。だがヒトラーが戦争することなく、チェコスロバキアのズデーテン地方をイギリスとの交渉で、領土を得ることに成功。暗殺計画の意義が失われてしまった。

ダンピール海峡編

アメリカでは大富豪ハワード・ヒューズによって、みらいを知る者が集められ、特別任務部隊セクションSが編成。ダンピール海峡で、みらいとセクションSと戦うことに。航空科の佐竹一尉が命を落とす。

史実では…

陸軍が強行し、ダンピール海峡の戦いで14万名もの犠牲を出した。

みらいクーデーター編

草加に影響を受けた菊池が、みらいでクーデーターを起こす。原爆で戦争に勝つ日本を見たい。菊池はその誘惑に駆られた。角松はみらいを降りる。角松は、特高警察の拷問を受け、篠原一尉を失い、大日本帝国は敵だと痛感する。

山本五十六がラバウルで死亡。たった2時間だけ生き延びた。石原莞爾と毛沢東が会談を行う。

史実では…

通信傍受で山本五十六の情報がアメリカはわかっていた。五十六は待ち伏せされて戦死した。

インド洋編

インド洋で「YZ作戦」が展開され、みらいも日本軍として駆り出される。みらいの役割は、英印軍の電探と通信妨害だった。だが戦闘に巻き込まれ、英印軍を攻撃せざるをえない状況に。立花二尉を失う。

史実では…

インパール作戦では、補給を無視した形で行われ、6万5,000名の犠牲を出した。

南京編

南京に「みらい」の初代艦長である梅津が向かった。科学者・倉田万作を拉致して原爆のプラントを強奪しようとした。だが、石原莞爾に知られて、梅津は追い詰められる。梅津は最後まで原爆プラントの破棄を諦めないまま生命を落とす。

この間に、角松は潜水艦で「みらい」へ戻る。菊池も角松と志を同じにするが、みらいは帝国軍に奪われてしまう…。みらいをマリアナへ曳航しようとするところを、角松は奪還作戦を敢行する。

史実では…

原爆開発するならドイツといわれていた。アメリカは技術後進国。だがヒトラーは大戦中の完成は難しいと判断して、開発をやめていた。

マリアナ決戦編

日米の戦力が終結するマリアナ決戦。空母対空母の戦い。そして戦艦大和、武蔵がそろい踏み。この間に、草加は大和奪還を企んでいた。原子爆弾を運ぶのを大和に託したのだ。そして角松たちは少人数で、大和の原爆解体に向かう。草加と角松の対決に決着がつく。

史実では…

マリアナ諸島での戦いは、圧倒的にアメリカが有利な戦力だった。

戦後編

1944年10月2日、ハワイオアフ島で日本と連合国の講和会議が開かれ、平和条約が締結された。その半年前の4月、宮中は東条内閣に不信を表明、第四次近衛内閣が組閣。三国同盟を破棄して、日本はドイツに宣戦布告し、ハル・ノートを受け入れて海外領土と占領地の放棄・返還を約束した。角松が生き残った戦後は、日本史に残る戦後とは違っていた。

史実では…

本土決戦、さらには原爆投下を経て終戦へ。

太平洋戦争が何だったのかを考えるきっかけに

『ジパング』は、日本史の知識がなければ、かなりわかりづらい。だが、史実を踏まえていると、なんとも緻密な設定にうなってしまう。

さらに角松と草加が目指すものから、国とはなにか、平和とはなにかを考えることができる。かなり懐の深い作品だ。こういった重厚な作品が読めるのは本当に贅沢だと思う。