戦争とはなにか?
そもそも戦争の歴史をわかっていないのではないか?そんな思いがあり、戦争に関わる本を読んでみましたので、ご紹介したいと思います。
【古典】クラウゼヴィッツ『戦争論』を知るための本
まずは戦争について知りたいなら手にとっておきたいのが、古典ともいえるのがクラウゼヴィッツの『戦争論』です。解説本を含めてまとめていきます。
『戦争論』クラウゼヴィッツ
「戦争とは、暴力によって、自分の意志を、相手に押しつけることである」
クラウゼヴィッツの戦争の定義です。戦争とはなにか?を考える上で、クラウゼヴィッツの『戦争論』は外すことはできません。
クラウゼヴィッツが本書を記したきっかけが、ナポレオンでした。国民を動員して相手国を殲滅するという近代にも通じる戦争のスタイルになったのがこの時代。
だからこそクラウゼヴィッツの考えは、戦争の本質に迫っていると感じます。
『縮訳版 戦争論』
クラウゼヴィッツの『戦争論』の4分の1ほどにまとめています。
だからといって『戦争論』について知ることができないかというと、その逆。余計なことを削ぎ落として翻訳されているので、読みやすくなっているんですね。
原著になるべく近い内容で、戦争論のエッセンスを知るたい方におすすめです。
『クラウゼヴィッツの戦争論のことがマンガで3時間でマスターできる本』
図解を使いながら、難解とされるクラウゼヴィッツの『戦争論』をわかりやすく解説してくれます。
戦争の本質として政治性命題と暴力性命題があり、政治は知性であり、戦争はその道具にすぎず、その逆はありえない。
クラウゼヴィッツの『戦争論』を解説しながら、クラウゼヴィッツ本人の人生についてもまとめています。
『図解クラウゼヴィッツ「戦争論」は面白い!』
戦争論についての解説はもちろん、**実際の戦争の考察も加わっています。
**ナポレオン時代の戦争だけではなく、太平洋戦争、ローマ軍の戦いなど、事例が豊富なのが特徴です。『戦争論』を現代の戦争に置き換えて思考できる内容になっています。
『もう一つの戦略教科書「戦争論」』
『孫子』と並ぶ戦略教科書ともいわれるクラウゼヴィッツの『戦争論』。ビジネスにどう活かせるのか?という視点で、『戦争論』を解説していきます。
著者は、『最高の戦略教科書 孫子』を記した守屋淳。
『戦争論 まんがで読破』
構成が見事です。
現代の話とリンクさせて、わかりやすいポイントを伝えて、クラウセヴィッツ自身の物語へと転換させる。まんがで読破シリーズはとにかく読みやすいし、入門書としておすすめしたいです。
【古典】ロジェ・カイヨワ『戦争論』を知るための本
もう一つの戦争論として、ロジェ・カイヨワが記した古典があります。
『戦争論』ロジェ・カイヨワ
戦争そのものの研究ではなく、戦争が人間の心と精神とを如何にひきつけ恍惚とさせるかを研究したのが、ロジェ・カイヨワです。
「戦争は、影のように文明につきまとい、文明と共に成長する」
戦争は野蛮だ、文明国はそんなことをしない、といった考え方ではなく、戦争の発展と文明の発展とは、切っても切れない関係。そのことが強くわかる内容になっています。
『ロジェ・カイヨワ戦争論(NHK100分de名著))』
NHKの100分de名著では、ロジェ・カイヨワの『戦争論』を取り上げています。
ロジェ・カイヨワが考えた戦争の本質のほか、戦争形態の変遷についてもしっかり章を割いて解説されています。
戦争の本質を知るための本
戦争の本質をしっかり把握するための本を紹介していきます。
『本当の戦争の話をしよう 世界の「対立」を仕切る』
国際紛争を解決する専門家による高校生への授業をベースにしているので、かなり読みやすいです!
「国際法では戦争を禁止しているかというと、そうでない。条件がそろって一定のルールに従えば、戦争はやってはいけないものではないわけです」
そう戦争は国家が形成されたときに、許された行為になっているんですね。これは押さえておかないと、戦争平和は絵空事になってしまうと思います。
自衛のための戦争が認められる条件は以下。
- 武力攻撃を受けて緊急的に対処しなければならない
- 武力行使以外にそれに対処する方法がない
- 武力行使するとしたら必要最小限であること
ほかにもイラク戦争など、実際に起こった戦争について考察がまとめられています。
『戦争の社会学』
冒頭は戦争の定義から。
戦争の一つの特徴として、暴力を行使しても、法律に違反したとみなされないことがあるとしています。これはかなり特殊なこと。
後半は戦争の歴史を高速で振り返っていきます。農業があって定住したことで争いが生まれ、都市国家が確立すると戦争マシンを化していく。
テンポがよくてかなり読みやすいです。
『戦争の条件』
A国がB国に軍事侵攻を開始した。B国はどうすればよいだろうか。
このような問いがいくつか並び、戦争について考察していく構成になっています。 ちなみ先の問いの答えは、B国はA国と戦うのみ。侵略が始まれば、屈服するか、抵抗して戦うしかないわけです。
平和を壊すのも平和を保つのも軍隊。この矛盾をどう考えるといいのか。国際政治学の入門書として活用できる内容です。
『世界から戦争がなくならない本当の理由』
戦後の日本と世界の戦争史をざっと振り返ることができます。解説がていねいで読みやすい。世界での戦争を考えるには、読んでおいていい一冊だと思います。
『ドキュメント 戦争広告代理店』
驚愕の内容…。
ボスニア・ヘルツェゴビナ共和国と、セルビア共和国の対立には、戦争PR会社が絡んでいたんですね。
ボスニア・ヘルツェゴビナ共和国の外務大臣シライジッチは、アメリカのPR会社がついていて、セルビア人の悪のイメージを押し出していったという内容。
アメリカを動かすために、大統領、副大統領、議会、メディアとあらゆるところへ働きかけていきます。
セルビアの行為を「民族浄化」という強烈なキャッチコピーにしたところから、ボスニア・ヘルツェゴビナへの温情が増えていきます。
まるっきりの嘘を流していたわけではないものの、いかにPRが大事かが分かります。そして人はどれだけイメージに引っ張られて行動しているかも。これが現代の戦争。
『すべての戦争は自衛意識から始まる』
自衛意識が増長していくことで戦争が起こる怖さを、皮肉をこめて書いています。
著者はオウム真理教を追ったドキュメンタリー『A』シリーズの森達也。
戦争から目をそむけてはいけない
どの本も戦争は野蛮な行為なわけではなく、国家形成にあたって認められた装置だという前提になっていました。
戦争はいけない、戦争は怖ろしいもの、と目をそむけているだけでは、世界情勢を把握することができません。
戦争というものの本質を把握することで、平和への道のりが見えてくるのだと思います。