たかゆうの読書日記

本が好きです。読んだ本を中心に、映画・マンガ・テレビなどについても言及できればと思います。

『USJを劇的に変えたたった一つの考え方』マーケティング思考が企業も個人も飛躍させる理由

USJをV字回復に導いた森岡毅さんのマーケティング入門。

本書の目的は以下の2点。

  • 個人も会社もビジネスで成功するためのカギである「マーケティング思考」を伝えること。
  • 私が体得してきた「キャリア・アップの秘訣」を伝えること。

マーケティング思考が企業も個人も飛躍させる理由を探っていきます。

消費者視点の経営に大転換!

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、2015年10月には月間集客175万人を超えて、日本一になっています。

理由としては、すべてマーケティングを重視する企業になったことに集約されるそうです。マーケティング思考は、全ての仕事の成功確率をグンと上げてくれるというわけです。

USJを「消費者視点」という価値観と仕組みに変えたことが、V字回復への最大の原動力だといいます。

「ゲストが本当に喜ぶもの」と「ゲストが喜ぶだろうと作る側が思っているもの」。これは必ずしも一致しないんですね。プロの作り手はもっとも消費者から遠ざかっているというのは納得感があります。

マーケティングの最初にすべき最重要なこととは?

マーケティングの最初にすべき最重要な仕事とは、「どう戦うか」の前に「どこで戦うか」を正しく見極めること。

そうなんですよね。どういったイベントをすべきか、どういったアトラクションを開発すべきかなど、すぐに戦う方法を考えてしまいがち。

その前に「どこで戦うか」を見極めないと、いくらがんばっても積み上げがなくて、検証もできないわけです。

マーケティングの本質とは?

そもそもマーケティングは、アメリカ生まれの考え方です。19世紀後半から学問として体系化されたんですね。自由競争市場になっていく中で、生き残る術が研ぎすまれたことで生まれたわけです。

マーケティングの本質とは、売れる仕組みを作ること。そのために3つのことを制する必要があるといいます。

  1. 消費者の頭の中を制する
  2. 店頭を制する
  3. 商品の使用体験を制する

1.消費者の頭の中を制する

認知率を上げることが大事。選ばれる必然性を作ってあげること。そのためにブランド・エクイティー、消費者の頭の中にあるブランドに対する一定のイメージを競争に有利になるように築くことが大事になってくるのです。

2.店頭を制する

自ブランドを購入する可能性を最大化させるように配荷率、山積率、価格などの展開に注意しなくてはなりません。

3.商品の使用体験を制する

すぐに購入に結び付けられるかどうか。配荷率や値段、山積などが重要になってきます。

戦略とは目的達成ためのリソース配分

どこで戦うか?というのは、すなわち戦略です。

戦略とは、目的を達成するために資源(リソース)を配分する選択のこと。

なぜ戦略が必要なのか?

  • 達成すべき目的があるから
  • 資源(リソース)は常に不足しているから

リソースとは具体的に、カネ、ヒト、モノ、情報、時間、知的財産などです。

やることを選ぶということは同時にやらないことを選ぶということ。考え方の選択と集中が行われます。

戦略的に考える上で、目的→目標(ターゲット)→戦略→戦術の順に沿って大きいところから考えないといけません。

良い戦略と悪い戦略をどう見分けるのか?

良い戦略と悪い戦略を見極めるに、4つの項目に照らし合わせて判断する方法が紹介されています。

1.Selective:選択的かどうか やることとやらないことを明確に区別できているか

2.Sufficient:十分かどうか 戦略によって投入されることが決まった経営資源がその戦局での勝利に十分であるかどうかということ。

3.Sustainable:継続可能かどうか 短期ではなく中長期で維持継続できるか。

4.Synchronized:自社の特徴と整合性は? 自社の特徴を有利に活用できるかどうか。

この4つすべてにチェックが入っている必要はないのですが、どれかがマッチしているとうまくいく可能性があるそうです。

良い戦略を立てるために大切なことは、重要な経営資源である「情報」をきっちりと獲得するということ。

美しい戦略とは、相手と自分の特徴の差を、自身に有利になるように活用できているもの。

マーケティングフレームワーク

本書はかなり具体的なマーケティングフレームワークも紹介してくれています。

必ず戦況分析→目的→目標(WHO)→戦略(WHAT)→戦術(HOW)の順番で考えていくこと。

  • WHO:経営資源を投下する目標である消費者。
  • WHAT:ブランド・エクイティーの中で消費者がブランドを買う根源的な理由、ベネフィットのこと。
  • HOW:WHATをWHOに届ける仕掛けのこと。

戦況分析

戦況分析には5C分析が紹介されています。自社の理解、消費者の理解、流通など中間顧客理解、競合する他社の理解、ビジネスをとりまく地域社会の理解です。

目的の設定

目的設定のために重視すべきは3つ。

まずは実現可能性です。ギリギリ届く高さを狙うわけですね。そしてシンプルさ。理解できてすぐに覚えられることが大事です。最後に魅力的かどうか。これがあればモチベーションが上がります。

WHOだれに売るのか?

限られたリソースを有効活用するためにターゲットを絞る必要があります。消費者全体の中でも買う確率や購買欲に大きな偏りがあることも理由のひとつ。

そのためにコアターゲットと、もう少し大きな括りとなる戦略ターゲットを決めていきます。

で、コアターゲットの見つけ方は6つ。

1.ペネトレーション:カテゴリーの中で自ブランドの世帯浸透率を増やせるグループはいないか。

2.ロイヤルティ:既存の使用者の中でSOR(1年に消費する自ブランドの割合)を伸ばせるグループはいないか

3.コンサプション:既存の使用者の中で1回あたりの消費量を増やせるグループはいないか。

4.システム:既存の使用者の中で使用商品の種類(SKU数)を増やせるグループはいないか。

5.パーチェス・サイクル:既存の使用者の中で購入頻度を上げる(購入サイクルを短くする)理由を作れるグループはいないか。

6.ブランド・スイッチ:競合ブランド使用者の中にブランド変更の可能性の高いグループはないか。

消費者インサイト

コアターゲットの深層心理を探っていきます。消費者インサイトとは、消費者の隠された真実のこと。インサイトをつかれることで消費者はベネフィットを理解しやすくなったり、欲しくなったりするわけです。

WHATなにを売るのか?

自ブランドの消費者価値を考えていきます。USJだとアトラクションを売っているのではなく、アトラクションを体験した感情を売っていることになります。

HOWどうやって売るのか?

HOWは、WHATをWHOに届けるための仕掛け。HOWを整理したものが、マーケティング・ミックスで、4Pとも呼ばれます。4Pとは、製品、価格、流通、プロモーションのこと。

マーケティング入門として具体性がある

USJというわかりやすい具体例を軸にしながら、マーケティングを解説してくれるので、入門書としておすすめです。体系的に書いてあるのがうれしい。