たかゆうの読書日記

本が好きです。読んだ本を中心に、映画・マンガ・テレビなどについても言及できればと思います。

小松左京『日本沈没』のあらすじは?ドラマ原作小説の魅力を紹介

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小松左京の『日本沈没』が、テレビドラマ化!日曜劇場で「日本沈没-希望のひと-」として放送されます。

原作は、日本SFの金字塔ではありますが、どのような内容なのでしょうか?

日本沈没』『日本沈没第二部』の読みどころをしっかり紹介していきたいと思います!そのほか、さいとうたかをが描いた漫画版『日本沈没』も触れていきます。

原作小説『日本沈没』のあらすじ・魅力

なんといっても、日本が沈没するという設定のすごさ。「そんなのありえる?」「実際に起こったらどうなるの?」と、あらすじを聞いただけで、どんな展開になるのか気になると思います。

実際に小説を読んでみると、日本になにか異変が起きていることがジワリジワリと描写されていくんですね。

小説の冒頭で、東京駅の八重洲で小野寺がウォータークーラーで水を飲もうとする場面があります。そこで「壁には、縦に、細い亀裂が走っていた」という違和感がある状態なのがわかります。

さらに読んでほしいのは、関東地方での大地震の描写。

そのとき、代々木の森から、あちこちに点在する木立ちから、何か黒いものが、空に向かってゴマ粒をまいたように、ワラワラと立ちのぼった。鳩が、雀が、鴉が…鳥たちが突然一斉に狂ったように飛び立ったのだった。

なにか決定的なことが起こる予兆を示しています。

ドン!と下から突き上げるような、すごい衝撃がおそってきたのはその瞬間だった。おやと思うひまもなく、巨人のハンマーで、下から上にむかってたたきのめされるような衝撃が、ドン!ドン!ドン!ドン!と、つづけざまに、つき上げてきた。

机の上の湯呑やインク瓶が舞い上がって、画鋲を入れた箱が床に落ちて、床に鋲がぶちまかれる。そして鉄筋ビルが傾き、人々が逃げ惑う。とにかく臨場感に圧倒されます。

そして、小松左京のすごさを感じるのは、徹底した地質学的な考証がしっかりしている点。途中で日本政府が、この状況を分析する場面がありますが、気団とマントル対流の相似性を図で見せてくれます。

突拍子もない設定に、説得力のあるロジックが漂うことで、ただの絵空事な話ではないと感じることができるわけです。

小説『日本沈没 第二部』のあらすじ・魅力

実は『日本沈没』には第二部が存在しています。発行は2006年で、実に33年ぶりの続編です。

小松左京は『日本沈没』を描いたとき、最後に「第一部完」という言葉で結んでいます。第二部の構想がすでにあったわけですね。

では、なぜここまで間が空いてしまったのか?

小説の素材を集めていたものの、タイミングが合わずに、小松左京自身が執筆するには体力がなくなってきた。そこで、プロジェクトチームを組めば、小説作りは可能ではないかという感触があって、数人のSF作家が入って、『日本沈没 第二部』の内容を詰めて、完成に至ったそうです。

テーマは、日本人の漂流物語。日本沈没』執筆の時点で、小松左京は国を失った日本人を描こうとしていました。戦後、高度経済成長で浮かれて戦争すら忘れそうになっている日本人へ、違和感があった。かつて国を失ったかもしれない日本人を、フィクションの世界でその危機に直面させてみようとしたそうです。

だから本来、描きたかったのは『日本沈没 第二部』の内容だったわけです。

内容としては、日本が沈没したあとの世界で、日本人は近隣諸国とどう対峙していくのかを、さまざまな状況で描いていきます。

中国は日本海へ進出しようと北朝鮮へ侵攻。竹島問題も出てきます。

他国へ離散していく日本人たち。事前に物資移動していたこともありますが、彼らが「帰る国」はもう存在しない。そんな悲哀も感じさせてくれます。

漫画『日本沈没』のあらすじ・魅力

日本沈没』は、さいとうたかをによって、漫画化もされています。かなりの情報量で、原作を忠実に漫画化しようとする意思を感じます。

地震描写はおそろしいですし、やはり日本沈没にいたる場面は、漫画だからこそのダイナミックさを感じさせてくれます。必見です!

ドラマ「日本沈没-希望のひと-」のあらすじ・魅力

2023年、東京。東山総理(仲村トオル)は、世界環境会議で地球物理学の権威である世良教授(國村隼)のもと「COMS<コムス>」のさらなる推進を高らかに表明した。さらに官房長官の長沼周也(杉本哲太)が、東山が“未来の日本”を見据えて各省庁の優秀な若手官僚たちを集めた“日本未来推進会議”を発足すると発表。そのメンバーに環境省の天海啓示(小栗旬)、経産省の常盤紘一(松山ケンイチ)も選ばれていた

ドラマの舞台は2023年になっていて、原作には登場いないキャラクターが多く出演するようです。

個人的には、日本未来推進会議がどのような思想のもとに集い、日本を動かしていくのかが楽しみ。現代とリンクするような内容に期待したいです。

原作を読んでおくとドラマも楽しめるはず

日本沈没』は400万部も売れている作品で、いまだに古びない。というか、現実が追いついている気すらします。

ドラマはオリジナル要素が多いようですが、原作リスペクトはあるはず。どこまで原作エッセンスを盛り込んでいるのかを知るために、原作に触れてみてもいいかなと思います。