橘玲の本10冊を読み込んだら人生攻略法が見えてきた

幸せな暮らしをしたい。大金持ちでなくてもいい。普通でいい。

そんな願いさえ叶えることが難しい時代に、なにを頼りに生きていけばいいのでしょうか。人生の幸せを考えるうえで、橘玲さんの書籍は大きなヒントを与えてくれます。

ただしかなりの劇薬。世間で考えられていることが、最新のエビデンスとともに、見事に破壊されるからです。

しかし、表層的なモヤのかかった世界で、生きづらいともがくよりは、残酷な世界を直視して、それでも生きていくんだという決意が、今の時代に必要なのだと思います。

今回は、橘玲さんの書籍から、人生の攻略法を紐解いていきます。なぜ生きづらいいのか、そう思っている人に、生きていくための指標になる内容になればと思います。

言ってはいけない真実

インパクトが強い衝撃の遺伝について、橘さんの著書から整理していきます。

努力は遺伝に勝てない

「背の高い親からは背の高い子が生まれる」「陽気な親の子どもの性格は明るい」。これは身体や性格で遺伝するのはわかりやすいですよね。

「根暗な親から根暗な子が生まれる」「太った子から太った子が生まれる」といったことはなぜか受け入れづらい…。ポジティブなことだけではなくて、ネガティブなことだって遺伝するのに。

これはいまの社会に暗黙の規範が影響しているとしています。子どもは明るくいるべき、暗い子どもには問題がある、といった規範があるから違和感があるんですね。規範から外れることを、遺伝のせいにするべきではないと思っているわけです。

暗い子には明るくなれ、太った子には痩せろ、といった社会的な抑圧がある。橘さんはこの抑圧のほうが問題ではないか?と指摘しています。

行動遺伝学によると、遺伝については答えが出ていると言います。知能に関係する遺伝率は、以下のとおりです。

  • 論理的推論能力 68%
  • 一般知能IQ 77%

さらに統合失調症や双極性障害の遺伝率は80%を超えているというのです。

環境はどうなのか?

では、環境の影響はどうなのでしょうか?

「共有環境(育ち)」と「非共有環境(友だち関係)」に分けてみると、驚きの結果が出てきます。

子どもには、共有環境はほとんど影響していないというのです。非共有環境のほうがまだ影響を及ぼしている。

一卵性双生児は、いっしょに同じ親に育てられようが、別々の家庭で育とうが、同じようによく似ていた。同じ家庭で育った二卵性双生児よりも、別々の家庭で育った一卵性双生児のほうがずっとよく似ているというのです。

親がやることなんて、子どもにはほとんど影響がないわけです…

美貌格差は存在する

見た目で人生が決まるということも、証明されています。

  • 美人とブスの経済格差は3600万円
  • 容姿が劣る男性は並みの男性より13%収入が少ない
  • 卒業写真であまり笑っていなかった人の離婚率は、満面の笑みの卒業生の5倍
  • 被告人が無罪を主張した裁判で、大人びた顔の被告は童顔の被告の2倍の有罪率

といった嫌悪感を抱くような事実が突きつけられます。

遺伝の影響を踏まえることが幸せへの近道

遺伝で決まるなら、何もする気が起きないですよね。まさに残酷で不都合な事実です…。

それでも不都合な事実に蓋をするのではなく、向き合うことが大事だと、橘さんは訴えかけます。遺伝したとするうえで幸福になるための方法を模索するべきだと。ではどうすればいいのか?次から具体的に解明していきます。

遺伝についての詳細を知りたい方はこちらも読んでみてください。

残酷な世界を生き残る方法

遺伝子に格差が組み込まれているとしたら、なす術がありません。努力しろと言わながらも実態は遺伝子で決まる世界。

さらに好きなことを仕事にする、という言葉にも欺瞞があるとしています。社会に需要がなければ、成功できる保証がないわけで、ここに大きな矛盾があるのです。

負け組のなかに勝ち組がいる

覚えておきたいのは、いまの時代は「勝ち組」だけが生き残るのではないということ。

例えば、音楽では一般的なヒット曲は数が少なく、歌手も集中しています。しかしよく見ていくと、そこまでのヒットではないと思える曲が強いファンを抱えていることがあります。

一見、負け組と思えるなかにも、そのなかで勝ち組が存在するんですね。情報発信やマネタイズの方法が、多様化したことで起こっている現象。

好きを仕事にする方法は1つだけ

人生で大事なプロジェクトは、「好きなこと・得意なこと」を仕事にする方法を見つけること。だからこそ、自分だけのニッチを見つける。もちろんニーズがある領域に調整しながらです。

特定のジャンルを好きになっても、同じ好みの人はいるはず。ニッチはあらゆるジャンルに存在する時代になっていて、そこは大手や大企業は狙わない領域になるはずです。それを上手にビジネス化することで売上につなげていくわけです。

そのためにトライアンドエラーが必要。会社ではなく仕事を選びながらそれを見つけていく方法を、おすすめしています。

自分の好きはスピリチュアルが教えてくれる

自分らしいかを基準にして、おもしろそうな仕事をいろいろ試してみるなかで、なにが好きかわかってくるはず。本当にやりたいことは、不思議と自分でもわかるんですね。この経験は誰もがあるのではないでしょうか?

これを橘さんは、スピリチュアルという言葉を使って説明しています。少しいかがわしく感じるかもしれませんが、定義としては以下になります。

  • スピリチュアル=無意識+魂を重ね合わせた言葉

スピリチュアルが拒絶するなら妥協してはいけない。きらきらのキャリアよりも、魅力的な物語を作れる人生を歩むべきとしています。

伽藍とバザール

トライアンドエラーをするうえで覚えておきたい概念が、橘さんが提唱する伽藍とバザールです。

  • 伽藍:壁に囲まれた閉鎖的な場所、ネガティブゲーム
  • バザール:参入も退出も自由、どんどんチャレンジ、失敗恐れず大胆なことに挑戦する、ポジティブゲーム

同じ会社で辞めるにも辞められないとなると、それが伽藍にいることなわけです。バザールは、どんどんチャレンジできること。同じ会社にいたとしても、社内の仕事で領域を広げたり、副業やほかのことでチャレンジしていく。そうすることで、自分の好きと社会の需要が合致することが見つかりやすくなります。

人生は攻略できる

橘さんのスタンスは、決して悲観的ではないんですね。事実を知ることで人生は攻略できるとまで言っています。

幸せは3つの資本で成り立つ

「人は幸福になるために生きているけれど、幸福になるようにデザインされているわけではない」。だったら幸せをデザインしてみようというわけです。橘さんが提示している幸せの定義が納得度の高いものになっています。

3つの資本で分けてみると、幸せの要素が明確になると思います。

  • 金融資産:株や不動産でお金を増やすこと
  • 人的資本:給料が高くて仕事が評価されている
  • 社会資本:人間関係が良好、家族や恋人、友達がいる

これらがすべてそろっている必要はなくて、幸福にはさまざまな形がある。だけど不幸な状態は決まっていて、この3つの資本がないことなんですね。

お金がない、仕事がない、頼れる人間関係もない、この状態が不幸に突入していることはわかりやすいと思います。

幸せになりたければ長期的に考える

終わりよければすべてよし。幸福を感じるには、人生の後半が幸福でないといけなくて、上昇していくことが大事というわけですね。

  • 優先順位1位 未来を優先する
  • 優先順位2位 いま楽しむことをやる

幸せになりたければ、長期的に得ができる選択肢を優先しながら、土台をつくること。そのうえで自由に踊りましょう。

  • 成功を手にして自由に生きるには人生の土台を設計せよ
  • 土台を合理的にする、その上で自由になることができる

幸せについてはこちらの本が詳しいです!

次は土台作りについて見ていきましょう。

シンプルで合理的な人生設計とは?

土台作りのために必要な要素としては、好きを見つけることもそうですが、ここでは「お金」「働き方」「時間術」「健康」について見ていきましょう。

お金持ちになるための方法

お金持ちとはどういう状態か?

  • お金持ち=(収入-支出)+(資産×運用利回り)

橘さんはシンプルなたった一つに式にまとめています。お金持ちになるには3つの方法しかないなんですね。

  1. 収入を増やす
  2. 支出を減らす
  3. 運用利回りを上げる

そして収入を増やすには、「人的資本を労働市場に投資する」「金融資本を金融市場に投資する」ことだけ。人的資本とはお金を稼ぐ力になります。

そして、収入を増やすには、3つの方法を考えていくことが大事としています。

  • 人的資本を大きくする→もっと稼ぐ
  • 人的資本を長く運用する→長く働く
  • 世帯内の人的資本の数を増やす→共働き

投資について詳しくはこちらの本をぜひ手にとってみてください!

3つの働き方

どのような働き方があるのかも、しっかり整理しておきましょう。

  • クリエイター:会社員ではない、成功難しいが拡張可能
  • スペシャリスト:会社員、拡張不可能
  • バックオフィス:会社員、非正規、拡張できない

スペシャリストは日本では会社員となりますが、欧米ではサラリーマンは絶滅危惧種だといいます。

スペシャリストは、仕事と会社が一体化しているわけではない。一体化しているのはバックオフィスだけなんですね。スペシャリストは自営か組織所属か、自分で決めることができる人を指す。企業の専門家として外部から支援することもあるんです。そしてスペシャリストには定年はないのが強みです。

会社所属でも個人が見えるようになってフリーエージェント化が起こっているのは、日本でも今後加速していくでしょう。

時間術で大事なこと

時間の大切さは誰もが感じることでしょう。さらにお金は増やせても時間は増やせないんです。それだけ時間は平等で貴重なもの。

ただ時間効率化やタイパには、橘さんは否定的です。時間に追われる人生をやめるための時間術を提案します。

それはかなり言われたらその通りというものばかり。拍子抜けするくらいに。

絶対に削ってはいけないものは、「睡眠」だとしています。活動できる1日のうち、10時間しかないんです。その時間を集中してパフォーマンスを高めるために、睡眠は削ってはいけないんですね。

時間が増える魔法の投資として「散歩」をおすすめしています。散歩は死亡リスクを3分の2に下げてくれる。健康寿命が伸びるならば、1日25分は安いもの。

人生の成功のために追われなくていい時間を確保していく。常に複数の選択肢を持ちトライアンドエラーをして、好きなこと・得意なことに時間を使えるようにするべきなんですね。

無理ゲー社会になっている理由

そもそもこの社会が無理ゲーになった理由はどこにあるのでしょうか?きらびやかな世界のなかで、社会的経済的に成功し、評判と性愛を獲得するという困難なゲームをたった1人で攻略しなければならない。社会は上級国民と下級国民に分断される。

努力不足と論破される

お金こそ正義の社会より、能力がすべてのほうが言い訳ができない。冒頭でも伝えましたが、失敗したとかうまくいかないときに、努力不足と言われるわけです。

成功できていないと努力不足、自己責任となる世界は、生きるのがつらくなりますよね。努力できること自体が一種の才能なわけです。

非モテが加速される

女性も社会で地位を確保できるようになってきています。ものすごくいいことですが、リベラルな社会では結婚しない女性が増えるのは当たり前。

シビアに外見や性格、才能を見るようになるからです。モテない男子は見向きもされなくなっていくのです。

政府も助けてくれない

それぞれが自分らしく生きる社会では、政府はサポートする方法がわからなくなっています。

自分らしく生きたい=政府にサポートしてほしい、は真逆の発想。自由を推し進めると、手厚いサポートを手放すことになるわけで、政府が助けられることがどんどんなくなっていくわけです。

私とはなにか?

どこに自分が活かせる場所があるのでしょうか。私は何者なのか?私とあなたはなぜ違っているのか?科学として解明できるようになったといいます。

ビッグファイブ理論を理解する

解明するには、ビッグファイブ理論を理解することが必要です。

  1. 外交的、内向的
  2. 神経症傾向
  3. 協調性
  4. 堅実性
  5. 経験への開放性

これらの要素が、感じ方と行動に現れて、他者にキャラクター性として認知されるわけです。

人類の知の集積を知る

ここまで橘さんの著書の要素を触れてきましたが、ほとんどのことにエビデンスがあるといいます。

最先端進化論

まずは進化心理学、進化生物学の発達が上げられます。脳科学、遺伝学ともつながり、ゲーム理論、行動経済学を取り入れることで、人間の本質に迫ることができているんですね。

進化論の知見

感情論ではなくて、進化論という科学の知見から論じることを、橘さんは重視しています。

進化論は、大きなパラダイム転換なんですね。優生思想が出てきて、進化論が批判にさらされることになったものの、進化生物学、進化心理学になって、人間を解明することになっているそうです。

体だけではなく、心や感情も進化してきたわけで、パラダイム転換後の世界に生きている。

そのために読むべき本も、変化していると言っていて、橘さんの読まなくていい読書案内はこちら。

この社会を生きていくためのヒントが詰まっている

橘玲さんは同じ論を繰り返しているので、既視感がある本も多いのですが、それだけ言っている本質は変わらないということでもあります。なんか表層的な気がすると思っているなら、橘玲さんの書籍を手にってみてほしいと思います!