6年ぶりの新刊!
村上春樹の『街とその不確かな壁』が刊行されました。不思議な春樹ワールドは健在でありながら、じわりと進んでいく物語をじっくり味わいたくなる作品になっています。
本作のあらすじや魅力をまとめていきたいと思います!
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『街とその不確かな壁』あらすじ
本作は1部、2部、3部で構成されています。
『街とその不確かな壁』第1部
物語は、10代の少年がある少女に恋をしているところから始まります。少女は、この現実の世界にいる自分はほんものではなく、もう一つの世界、「高い壁に囲まれた街」に暮らしているのがほんものの自分だと言います。
そして彼女が話していた「高い壁に囲まれた街」にやってくることになります。この街では、人々は影を持っておらず、図書館には古い夢が置いてあります。
『街とその不確かな壁』第2部
現実世界の主人公が40歳を過ぎて、会社を辞めてしまいます。福島県の山奥の図書館で働くことが、自分の進む道だと思い始めるのです。
図書館長としてその地で生活することになり、イエローサブマリンの少年と出会います。そこから、主人公とイエローサブマリンの少年は、「高い壁に囲まれた街」を目指します。
『街とその不確かな壁』第3部
「高い壁に囲まれた街」を舞台に、記憶をなくした主人公が、夢読みを仕事をしています。イエローサブマリンの少年を見かけて、2人は一体化します。
『街とその不確かな壁』登場人物
- 主人公…少女への恋心を忘れられない。壁の世界では夢読みという仕事に就く。40代になった現実世界では、図書館長になる
- 少女…現実世界にはほんものの自分はいないとして、壁の世界へ
- 子易…図書館の元館長。亡くなっているが、図書館に現れる
- 添田…図書館の職員。
- イエローサブマリンの少年…図書館に現れる少年
- カフェの彼女…現実世界で主人公と心が惹かれ合う
『街とその不確かな壁』ネタバレ感想
大きなことは起こらない。じっくり読んでいくべき作品だと思います。細かい描写が多いんですね。淡々と会話を描いていく。だけど退屈ではないのです。そこには村上春樹の文章の味わいがあります。
そして本書はかなりわかりづらいところが多い。特に第一部は、時系列が錯綜することもあります。今の時代を描いているのは間違いなくて、壁の存在や影について、自分のなかで咀嚼することで、本書はおもしろみが増していきます。
村上春樹自身もこう言っています。
「若い時は、ポップでアクションのあるものにひかれる。ある種のスピードや意外性、論理の欠落なども大事だった。でも、もう僕も高齢者の部類です。この話は、3世代が立体的に絡み合う。色んな世代の目で見て、腰を落ち着けて人の内面をしっかりと描きたかった」
長編新作をあと何作読めるか。村上春樹が描く世界をぜひ読んでほしいと思います。