たかゆうの読書日記

本が好きです。読んだ本を中心に、映画・マンガ・テレビなどについても言及できればと思います。

【館シリーズ】おすすめの読む順番は?あらすじ・ネタバレ徹底解説!

綾辻行人の館シリーズは、ミステリーにどっぷりハマったきっかけになった作品です。

とくに『十角館の殺人』の衝撃度といったらなかったです。最後の1行でのドンデン返しに、小説でこんなことができるのか!という驚きがありました。

ほか館シリーズは、各作品のトリックに驚きがあって、魅力があります! 現時点で全9作あるので、読む順番やおすすめ度をまとめてみたいと思います。

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館シリーズとは?

館シリーズとは、綾辻行人が生み出した『十角館の殺人』からはじまる作品群です。

建築家・中村青司が建てた「館」が、主人公といってもいいシリーズ。なんとも妙な館ばかりが出てきて、その場所で惨劇が起こるんですね。この設定からして、ワクワクしていました。

  1. 十角館の殺人(1987年)
  2. 水車館の殺人(1988年)
  3. 迷路館の殺人(1988年)
  4. 人形館の殺人(1989年)
  5. 時計館の殺人(1991年)
  6. 黒猫館の殺人(1992年)
  7. 暗黒館の殺人(2004年)
  8. びっくり館の殺人(2006年)
  9. 奇面館の殺人(2012年)

『十角館の殺人』から『黒猫館の殺人』には短い間隔で、刊行されていました。

そこから刊行に時間がかかり、『暗黒館の殺人』『奇面館の殺人』はトリックや話が複雑になっていきます。

『十角館の殺人』Huluでドラマ化

館シリーズの1冊目『十角館の殺人』がドラマ化! 2024年3月22日から全5話で配信されています。映像化不可能といわれた本作だけに、大きな注目を集めています。

ドラマはかなり再現度が高いと思います! 十角館なんてもう、上からの形やホールの雰囲気など、それを見るだけでも映像化の価値があるなと感じます。

そしてどうやってあのトリックを再現したのか? ぜひドラマを実際に見てほしいと思います。

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館シリーズ 読む順番は?

館シリーズの読む順番として、「刊行順」「優先度順」「必読順」で紹介します。

館シリーズ刊行順

館シリーズの読む順番としては、「刊行順」がおすすめです。なぜなら刊行順でのトリックが仕掛けられているからなんですね。

まず1作目『十角館の殺人』から3作目『迷路館の殺人』までを、刊行順に読んでほしいです。『迷路館の殺人』に壮大な仕掛けがあるからです。

そして、『暗黒館の殺人』は、『黒猫館の殺人』まで(『人形館の殺人』を除く)を読んでおくと、より一層の驚きがあります。

  • 1作目:十角館の殺人
  • 2作目:水車館の殺人
  • 3作目:迷路館の殺人
  • 4作目:人形館の殺人
  • 5作目:時計館の殺人
  • 6作目:黒猫館の殺人
  • 7作目:暗黒館の殺人
  • 8作目:びっくり館の殺人
  • 9作目:奇面館の殺人

館シリーズ優先度順【おすすめ6作品】

やはり『十角館の殺人』から『迷路館の殺人』までは一気に読むことで、館シリーズの魅力がわかると思います。そのあとは『時計館の殺人』『黒猫館の殺人』へ。

『暗黒館の殺人』は、過去の登場した館が登場するため、ここまでの6作品が館シリーズを堪能するルートです。

なお、『奇面館の殺人』は本格ミステリ作品で単体でも楽しめます。『人形館の殺人』はかなりの異色作、『びっくり館の殺人』は児童向けのため、興味が出たら読んでほしいと思います。

  • 1作目:十角館の殺人
  • 2作目:水車館の殺人
  • 3作目:迷路館の殺人
  • 5作目:時計館の殺人
  • 6作目:黒猫館の殺人
  • 7冊目:暗黒館の殺人

館シリーズ必読順【最短ルート3作品】

やはり『十角館の殺人』はマストです。そしてシリーズ最高傑作といわれることが多い『時計館の殺人』を読んでもらって、『奇面館の殺人』が最短ルートです。

  • 1作目:十角館の殺人
  • 5作目:時計館の殺人
  • 9作目:奇面館の殺人

館シリーズ10作目は?

館シリーズ10作目は『双子館の殺人』です。メフィストリーダーズクラブの会員限定小説誌『メフィスト』で連載中。かなり進みは遅いので、完結までは時間がかかりそうですが…。

館シリーズは全10作になると公言されていて、完結編になる可能性もあります。ただ続けられるなら続けたいという発言もあるので、まだまだ楽しみがありそうです。

館シリーズ あらすじ

それでは館シリーズのあらすじを紹介していきます。

『十角館の殺人』

十角形の館が建つ孤島で起こった惨劇…。大学のミステリー研究会の7人が、十角館にやってきた。連続殺人が起こってしまう。

初めて読んだときの衝撃は忘れられません1行ですべてがひっくり返る!日本のミステリ史上に残る作品。

ただトリックだけの作品ではなく、ミステリー研究会メンバーのやり取りもテンポがよくて、議論がおもしろいんですね。

館を建てた建築家・中村青司にフォーカスが当たるわけで、館シリーズとしてまずは読んでほしい作品です。

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『水車館の殺人』

仮面の当主と美少女が住む水車館。1年前の惨劇が、再び繰り返されるのか…。幻想画家・藤沼一成の遺作「幻影群像」を巡る秘密とは?

仮面の人物がいるなど、横溝作品へのオマージュともいえる本格ミステリ作品。館シリーズでみると、地味に思えるかも知れませんが、いやはや本格派で読みごたえ充分!

過去と現在が交互に語られ、謎が解明される構成にゾクッときてしまいます。

『迷路館の殺人』

地下にある奇妙な迷路館に、4人の作家が招待される。法外な賞金をかけて、作家たちはこの館を舞台にした推理小説の競作を始める。そして、連続殺人劇の幕が上がる…。

トリックの驚きは、館シリーズでもトップを争います。『十角館の殺人』があるものの、シリーズを読むことでの仕掛けに、本作のすごさがあると思うんですね。

『十角館の殺人』『水車館の殺人』と読んでいくことで、本作のおもしろさが存分に味わえます!

『人形館の殺人』

飛龍想一は、父親が遺した屋敷・人形館へと引っ越してきた。街では通り魔殺人が起こり、想一も人形館で過ごすうちに、何者かに狙われていると感じるようになる。彼は旧友である島田潔に助けを求めるのだが…。

館シリーズのなかでは、かなりの異彩を放つ作品。館シリーズを読み続けているからこそ、トリックの破壊力があります! 綾辻行人の仕掛けを堪能してみてください。

『時計館の殺人』上下巻

鎌倉のはずれに建つ、時計館。館に住む少女の亡霊、姿を消した美貌の霊能者。閉ざされた時計館で、おそるべき殺人劇が起こってしまう…。

館シリーズでも屈指の人気作!トリックがとてつもなく大がかりで、騙される快感を味わえるのは間違いないです。

『十角館の殺人』で探偵役を務めた江南孝明が登場するのもテンションが上がるポイントです。

『黒猫館の殺人』

鮎田冬馬は火災で重症を負ったうえに、記憶喪失になっていた。彼は推理作家の鹿谷門実に会うことで、黒猫館へと向かう。

エンタメ要素が高めで、かなりの変化球型のトリックが仕掛けられています。驚きが詰まっていたのと、犯人の動機がいまだに忘れられません。

『暗黒館の殺人』1〜4巻

青白い霧に峠を越えた湖上にそびえ立つ、暗黒館。ここでは十角塔からの墜落者、座敷牢、異形の双子、奇怪な宴と、忌まわしきことばかりが起こっていた…。

館シリーズ総決算といえる作品!これまでの館シリーズのエッセンスが散りばめられています。

推理小説というよりは、ダークファンタジーとして読むことをおすすめします。この世界観にひたってほしいと思います。

『びっくり館の殺人』

洋館びっくり館では、あやしい噂が流れていた。館に住む少年と友達になった三知也たちは、少年の祖父の異様な腹話術におののく。そして密室の惨劇が起こってしまう…。

館シリーズというには、関連性が弱く、そもそもが児童向けという作品。ただ単体作品として読む分には、魅力があるんですね。ホラーのゾクゾク感が好きな方におすすめです!

『奇面館の殺人』上下巻

奇面館の当主が主催する集いでは、訪れたすべての人たちが仮面をかぶっていた。大雪により館が孤立するなか、血みどろの惨劇が起こる…。

館シリーズのなかでも探偵小説としての魅力が詰まった作品!本格ミステリーとしてレベルが高くて、クローズドサークルものが好きならぜひ!

館シリーズ ネタバレ解説

ここから館シリーズのトリックについて、ネタバレで解説していきます。

『十角館の殺人』ネタバレ解説

犯人は?

犯人は、角島の十角館にいるヴァン。

トリックは?

本土にいる守須とヴァンは、同一人物。ミステリ研究会のなかで死に追いやられた中村千織の復讐のため、守須は殺人計画を実行した。

『水車館の殺人』ネタバレ解説

犯人は?

殺されたと思われていた水車館の主人の友人・正木慎吾。

トリックは?

仮面をかぶっていた藤沼紀一に、正木慎吾はなりすましていた。藤沼紀一の視点で語っている構成だが、それは正木の視点で語っていたことが明かされる。

焼却炉のバラバラ死体は、正木だったと思われたが、実は行方不明だった古川。薬指だけが正木のもので、自分で切り落として死んだと見せかけた。

水族館の主・藤沼紀一は、水車館のからくり空間に倒れて亡くなっていた。からくり空間には、紀一の父が描いた「幻影群像」があった。

そして「幻影群像」には、水車館、黒髪の美少女、仮面で顔を隠した男、右から二番目の指を失い「灰色の血」に染まった人間の左手が描かれていた。藤沼紀一の父は幻視者で、未来を予測していた。

『迷路館の殺人』ネタバレ解説

犯人は?

犯人は鮫島智生。小説では男性のように描かれているが、実は女性だった。

トリックは?

小説内の小説が展開される構成。

その小説では、小説家が次々と殺されて、犯人は宮垣葉太郎という結末に。それは、作者による仕掛けがあった。違う真実があるのだと。

鮫島智生が犯人、小説では男性のように描かれているが女性。真犯人に向けたメッセージだった。

犯人は女性で、はじめの殺人で生理で出血してしまい、首を掻っ切ったというの真相。鮫島の動機は、宮垣は遺産を小説家たちに渡すとしたが、鮫島は宮垣との子どもがいて、それは許せなかった。

そして冒頭で小説を読んでいた島田は、島田潔の長兄・島田勉。小説内小説の作者・鹿谷門実が、島田潔だということが明かされる。

『人形館の殺人』ネタバレ解説

犯人は?

語り手の飛龍想一。

トリックは?

飛龍想一は、人形館に住みはじめて強迫観念にかられていた。島田潔が想一の知り合いで探偵役として登場する。島田は架場こそが犯人だと指摘するが、隠し通路もなくて推理が破綻…。

実は想一は多重人格者ですべて妄想だった。想一の第2人格が殺人を起こしていた。人形館に住んでいる小説家の卵である辻井雪人は、子どもを殺していると疑われていたが、それも想一が起こした事件。母親殺しも、想一が犯人。

島田潔も想一の第3人格。島田が人形館に乗り込んだとき、だれもが唖然としていたのは、想一が「島田」と名乗っていたから。

さらに人形館には中村青司は関係していないことが明かされる。

『時計館の殺人』ネタバレ解説

犯人は?

時計館の管理人である伊波紗代子。

トリックは?

新館と旧館という2つの舞台が出てくる。旧館は1.2倍速の時計が用意されていて、新館と旧館の時間の流れが違うという大掛かりなトリック。

犯人はそれによって鉄壁のアリバイを作り上げた。新館と旧館をただ行き来しているだけで、同時に存在できる。

そもそも時計館は、16歳までしか生きられない娘のために、父親が考えた。早く16歳を迎えてほしいという、いびつな願いがこめられていた。

『黒猫館の殺人』ネタバレ解説

犯人は?

理性を失って殺人をしたかもしれない疑念が耐えられなかった、北川隼人。

トリックは?

手記を頼りに過去の事件を紐解いていく構成。過去の事件で、レナが死んだのは心臓麻痺だった。警察に通報されたくない天羽は、だれかが殺人犯だとした。そして氷川は理性を失った状態で殺人を犯したかもしれない状態が許せずに、麻生を殺して自殺に見せかけ、レナ殺人は麻生が犯人だとした。

鮎田冬馬=元黒猫館の館主・天羽辰也。天羽辰也は全内臓逆位症で、手記にその記載がある。実は館が2つあり、北海道阿寒の館でなく、オーストラリアタスマニア島に黒猫館がある。

『暗黒館の殺人』ネタバレ解説

犯人は?

これは館シリーズのエピソードゼロだった。中也(ちゅうや)は、中村青司。

トリックは?

塔から落下した人物は、18年前の使用人・諸居静の息子・忠敬。入れ替えトリック。江南=江南忠敬。浦登玄児=江南忠敬。

1958年に暗黒館に中村青司が訪れていた。暗黒館には、十角形の塔、藤沼一成の絵、宮垣葉太郎の署名本、古賀倫典によるからくり時計、黒猫館のアリスと、中村青司が手掛ける館の原点がそろっていた。

『びっくり館の殺人』ネタバレ解説

犯人は?

密室殺人が起こった古屋敷龍平を殺害した犯人は俊生。

トリックは?

主人公の三知也による腹話術の人形が、実は俊生だった。館が住んでいるものに乗っ取った=悪魔にした。

『奇面館の殺人』ネタバレ解説

犯人は?

歓びの仮面をつけていた創馬社長。

トリックは?

創馬社長は会合参加者と影山に睡眠薬を飲ませ、未来の仮面の鍵を影山から盗もうとした。影山は不眠症で日頃から睡眠薬を服用していたため、眠りが浅く気づかれてしまう。

そのため仕方なく犯人は影山を殺してしまった。創馬の本名は影山逸史で、彼こそが初代の影山透一の息子で2代目の館の持ち主。

館シリーズの魅力とは?

館シリーズは「新本格」というジャンルを起こしたわけで、ミステリ好きなら触れておくべきといえます。

特に『十角館の殺人』は必読! さらに味わいのちがう作品がそろっているので、それぞれのベストな作品が出てくるでしょう。

ぜひ館シリーズの魅力に触れてほしいと思います。