たかゆうの読書日記

本が好きです。読んだ本を中心に、映画・マンガ・テレビなどについても言及できればと思います。

【天才】三島由紀夫おすすめ12作品!『金閣寺』『仮面の告白』読んだ本から紹介

日本を憂えた三島由紀夫は、数多くの作品を生み出しています。

NHK『100分 de 名著』では、三島由紀夫の『金閣寺』を読み解いています。ゲストは平野啓一郎で、同じ小説家の視点から、かなり深い話が展開されています。

金閣寺をはじめとした三島由紀夫作品や論評を、実際に読んだものから紹介していきます。

三島由紀夫のおすすめ小説

三島由紀夫の小説からは文章の切れ味を感じることができます。一方で意外とコミカルな作品もあります。硬軟織り交ぜた作品を選んでみました。

『金閣寺』

父から金閣寺の美しさを聞いた溝口は、心象風景に完璧な美の金閣寺を思い描きます。しかし、実際の金閣寺を見て愕然とするのでした。

溝口は吃音に悩み、外界と接点がうすい青年で、心象と現実とのギャップで悩んでいます。それが美しい金閣寺をこの手で消失しようという動機につながっていきます。

すべてのエピソードや文章が、まるでパズルのように、三島由紀夫が描き出したいテーマを浮かび上がらせます。

『仮面の告白』

同性愛をテーマにしていて、三島由紀夫の自伝的な小説といわれるのが『仮面の告白』です。この作品に注目が集まり、24歳の三島由紀夫は作家として、羽ばたきます。

主人公は女性に欲情せずに、美しい男性の身体が傷つくことに感情が動かされます。仮面をかぶったまま、苦悩し疎外感を感じていくのです。

ただこの疎外感への苦悩は誰もが持っているもので、普遍性のある感情が描かれていると感じました。三島由紀夫の文章の構成の巧みさ、うまさを堪能でくる作品です。

『美しい星』

かなり好きです。『美しい星』は登場する家族全員が宇宙人、というトンデモ設定。

なんとも唐突に、家族それぞれ自分は宇宙人だったのだと覚醒していきます。そこに理由はなくて、宇宙人前提でツッコミも説明もなく物語は進んでいくんですね。

この小説はSFとは言えません。三島由紀夫が、「人類の愚かさとは?」「そして希望とはなにか?」を突き詰めていった結果、宇宙人視点から描く手法に行き着いたわけです。宇宙人が語る人類論、もっと狭めて日本人論にもなっています。

これが独特の世界観を醸し出していて、一見するとゆるいストーリーなんですが、ドキッとする指摘が盛り込まれているんです。宇宙人視点で「人類は生存すべきか、滅びるべきか」を突きつけてくるアイロニーに溢れた内容になっています。

ものすごくおもしろいし、深読みもできる一作でした。

『命売ります』

三島作品のなかではかなり読みやすい作品になります。話の筋はシンプルで、文章も分かりやすい。

羽仁男(はにお)が自殺に失敗したところから物語は始まります。

羽仁男が自殺をしようとしたきっかけがおもしろくて、夕刊を読んでいたらゴキブリがいたんですね。そのゴキブリが夕刊の活字の間に紛れ込んで、読もうとする活字がみんなゴキブリになってしまう。それにより自殺を決意します。

そこから羽仁男は「命を売る」仕事を始めることになるのです。

命を買う側の依頼人があらわれるわけですが、果たして羽仁男は命を落とすことができるのでしょうか。かなりヘンテコで不思議な展開が待っています。

『春の雪 豊饒の海(一)』

長編大作「豊饒の海」4部作の1作目。三島由紀夫の最後の作品シリーズになります。

舞台は明治末期。左の脇腹に3つのほくろがある清顕は、華族の家に生まれる。さらに位の高い聡子との禁断の恋を描きます。

お互いに恋心があるのだから、くっつけばいいものを、身分の違いやちょっとした意地の張り合いによって、清顕は聡子を突き放すような言動をとるんですね。そして聡子は、殿下と婚約することになる。そこから、清顕は聡子を愛していたことを自覚するのです。

春の雪というタイトルが、切なさを思わせる余韻の残る作品です。

『奔馬 豊饒の海(二)』

豊饒の海シリーズ、2作目。『春の雪』で清顕の親友として登場していた本多の視点で物語が展開されていきます。

38歳になった本多は、裁判所で判事を務めています。そして本多は、18歳の勲という少年と出会い、彼の脇腹に3つのほくろがあることを知る。本多は、清顕の生まれ変わりだと確信します。

勲が、華族の腐敗に憤っていたり、剣で日本を浄化しようと「純粋な結社」を結成していたり、けっこうきな臭い。三島由紀夫自身を投影しているとも思えます。

『暁の寺 豊饒の海(三)』

本多は47歳になり、舞台はバンコクへ。7歳の少女であるジン・ジャンと出会い、彼女は「自分は日本人の生まれ変わりで、本多のことも覚えている」と言います。

本多は常に清顕の生まれ変わりを探し続けるわけですね。だが、3つのほくるは、ジン・ジャンにありません。果たして彼女は生まれ変わりなのか?

バンコクの異国情緒あふれる雰囲気も味わうことができます。

『天人五衰 豊饒の海(四)』

76歳になった本多。天人伝説の伝わる静岡県の三保の松原で、16歳の安永透に出会います。透の脇腹に、3つのほくろがあったことから、本多は清顕・勲・ジン・ジャンの生まれ変わりだと思い、養子にすることを決めます。

だがこの透が、どんどん変質していって、老いた本多を虐待していきます。けっこう辛辣…。透は20歳になることが近づいていきますが、果たして生まれ変わりのなのか?

そしてラストには、豊饒の海の全体を締めくくる展開が待っています。青年期から老年期まで本多を軸としてたどってきた物語が、ついに終わりを迎える。

この天人五衰を描き終わった直後、三島由紀夫は、市ヶ谷駐屯地に赴き、割腹自殺を図ります。

三島由紀夫のおすすめエッセイ

三島由紀夫のエッセイからは、自身の思想が色濃く感じられます。作家・三島由紀夫はどのような考えを持っていのかを、手繰り寄せるための2冊をご紹介します。

『葉隠入門』

三島由紀夫が、「武士道というは、死ぬ事と見つけたり」で有名な『葉隠』を紹介していきます。

『葉隠』は、佐賀の藩士・山本常朝の人生哲学。常朝は主君に殉死する覚悟があったのですが、主君である鍋島光茂は殉死を固く禁止していました。

三島は、『葉隠』の3要素を、行動哲学、恋愛哲学、生きた哲学としています。この書に、三島の生き様が見え隠れするよう。三島由紀夫の思想を知るには、読んでおくべき1冊です。

『若きサムライのために』

三島由紀夫の思想が色濃く出ているエッセイ。

「人は、人生を始めてから、徐々に芸術を始める。私の場合は逆で、芸術を始めてから人生を始めたような気がしている」

「人間の真心がそのまま相手に通じると思うことはまったくの間違いである」

もうストイックなまでの三島由紀夫の生き様が、言葉からほとばしります。

三島由紀夫の評伝おすすめ作品

三島由紀夫の評伝をご紹介します。

『三島由紀夫論』平野啓一郎

三島はなぜ、あのような死に方をしたのか?答えは小説の中に秘められていた。

小説家・平野啓一郎が三島に迫った論評になります。600ページを超えるボリュームで、たいへんな労作です。分析も、ほかの本とは一線を画すもので、小説家ならではの視点があります。

「三島由紀夫にの実存の根底には、幾重にも折り重なった疎外感があった」という指摘から、小説の作品世界に深く潜り込んでいく。じっくり堪能してほしい論評です。

『ペルソナ 三島由紀夫伝』祖父からの系譜

猪瀬直樹が三島由紀夫の人生に迫ったノンフィクション作品です。

三島由紀夫の自伝的小説『仮面の告白』に触れられる「祖父の疑獄事件」。これをきっかけに猪瀬は、三島由紀夫の系譜を追っていきます。

三島由紀夫の祖父である平岡定太郎は、原敬の命で樺太庁長官に。資金繰りが苦しくなり、飯能吉三郎や杉野茂丸といった大物フィクサーと関係を持ってしまうんですね。

また三島行の父・平岡梓は、東京帝大法学部を出て農商務省へ。同期は岸信介。三島由紀夫に対しては、スパルタ教育だったそうです。

三島由紀夫のルーツを知りたいなら、読んでおきたい内容です。

日本文学を語る上で外せない作家

日本文学を語る上で外せない作家の1人が、三島由紀夫です。小説、エッセイ、評伝で、ぜひ三島由紀夫の世界に触れてみてください。