たかゆうのエンタメ日記

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『世界でいちばん透きとおった物語』ネタバレ解説・衝撃のラスト!紙の本だからこその驚き

『世界でいちばん透きとおった物語』は杉井光による小説です。

  • 紙の本でしか体験できない感動!
  • 電子書籍化絶対不可能!

といったように予測不能な衝撃のラストが待ち構えています。いやぁ、大げさだろうと思ってたものの、驚きでした…。

『世界でいちばん透きとおった物語』について、ネタバレ・あらすじ紹介しながら、どのようなラストなのか、解説していきます。

『世界でいちばん透きとおった物語』あらすじ(ネタバレなし)

大御所ミステリ作家・宮内彰吾が、61歳で亡くなります。宮内の死後、彼の長男から燈真(とうま)に連絡が入ります。

宮内は妻がいながらさまざまな女性と交際していて、そのうちの一つの子どもが、燈真だったのです。

長男はなにか知らないか?と、燈真に尋ねます。宮内は『世界でいちばん透きとおった物語』というタイトルの小説を書いていたらしく、

そして、奇妙なきっかけから燈真は、父の遺稿を探すことになるのです。そもそも完成していたのか?どういった内容だったのか?

『世界でいちばん透きとおった物語』登場人物

  • 藤坂燈真:主人公。遺稿を探すことになる
  • 宮内彰吾::大御所ミステリ作家
  • 宮内亮太:宮内彰吾の長男
  • 霧子:編集者。燈真の母親とも仕事をしていた

『世界でいちばん透きとおった物語』ネタバレ解説

『世界でいちばん透きとおった物語』について、ネタバレで解説していきます!

【世界でいちばん透きとおった物語】犯人はだれ?

燈真が、『世界でいちばん透きとおった物語』の原稿を探すなかで、どうにも妨害されていることがわかってきます。

燈真が自宅に帰ってきたときに鍵がかかっていなかった。侵入者がいたことがわかります。宮内彰吾の執筆メモと携帯電話が盗まれていたのです。執筆メモには、晩年の作品と執筆枚数が記されていました。『世界でいちばん透きとおった物語』が存在すると思ったきっかけになったメモです。

さらに、燈真は『世界でいちばん透きとおった物語』の原稿を手に入れるため、父親が懇意だった女優・琴美が住んでいた狛江の自宅へ向かいます。狛江の自宅には、原稿を見つけたものの、火災が起きて燃やされてしまいました…。

その犯人は、宮内彰吾の妻でした。

【世界でいちばん透きとおった物語】宮内彰吾は人を殺しかけたことがある?

宮内彰吾は人を殺しかけたという話が、さまざまな人の話から出てくんですね。

「腹にえものを突き入れて、手足も胴体もばらばらにして、臓器ごと引きずり出す」と、殺し方を語っていたようでした。

これは、考えてみると順番がおかしい。腹にえものを突き入れて、臓器を引きずり出すが先になるはずです。

だがすべてをそのままに解釈すると、堕胎する順番ということになります。すなわち、燈真のことを話していたんですね。

宮内彰吾は堕胎するように迫ったが、燈真の母親は拒否して、出産をしたというわけです。

【世界でいちばん透きとおった物語】どんな内容?

『世界でいちばん透きとおった物語』は、一見普通のミステリー作品として読めます。これは燈真に向けた作品だったことが判明します。

話としては完結しているものの、

燈真の特異体質がありました。紙の本が読めない、ゲラ刷りなら読めるんですね。ここから、燈真は次のページの文字が、はっきり見える目を持っていることがわかります。

本を読んでいると次のページの文字が、薄く見えますよね。それが燈真には文字が読めるくらい、見えるのです。

これは通常の本が読めないということにつながります。

そんな体質の燈真でも、本を読んでほしいと、宮内彰吾がチャレンジしたのが、『世界でいちばん透きとおった物語』だったのです。

【世界でいちばん透きとおった物語】驚きの仕掛けとは?

ではいよいよ、『世界でいちばん透きとおった物語』の最大の仕掛けを明かしていきたいと思います。

※ホントにネタバレなしで驚きたいなら、ここから先は読まずに本を手にとってほしいです…!

というわけで、ネタバレいきます。

『世界でいちばん透きとおった物語』は、燈真が読めるようにした本。そのために、左右対称の本にしようとしたのです。

少しわかりづらいですよね!?

実際の本を見てみましょう。

わかりますかね…。

  1. P10の1行目と、P11Pの最後の行が、同じ文字数になっている
  2. 同様にP10の2行目と、P11Pの最後から2行目が、同じ文字数になっている
  3. さらにP10の3行目と、P11Pの最後から3行目が、同じ文字数になっている

文字数をそろえることで、文字が透けることがなくなるんです。P11を読んでいるときに、P12の文字は裏写りしていないんです!1文字も。

これだけではありません。

『世界でいちばん透きとおった物語』がすごいのは、この小説自体、全ページで同じ細工をしているんですね。

物語の終盤で、宮内彰吾は左右対称にすることをあきらめていたことがわかります。その意志を受け継いで、燈真が左右対称の小説を書いたのが、本作なんです。

いやはや、全ページを見かえしたなる衝撃…。

  • 紙の本でしか体験できない感動!
  • 電子書籍化絶対不可能!
  • あなたの見る世界は透きとおる!

といった宣伝文句の意味がわかると思います。

どれだけの時間がかかったのでしょうか。一つの小説を書くのもたいへんなのに、文字数をすべてそろえるという気の遠くなるようなことをやっているのですから。

【世界でいちばん透きとおった物語】「 」の意味は?

まだまだ『世界でいちばん透きとおった物語』には、仕掛けがあります。

小説の最後のページ。ここに「 」が存在するんですね。

宮内彰吾が沈めた言葉、そして燈真が伝えたい言葉。

「 」があることで、次のページの言葉が透けて見えるのです。

そこに書かれた言葉は、「ありがとう」。

驚きとともに感動が押し寄せてくるラストになっています。

紙の本だからこその驚きの読書体験を!

文字や段落を使った仕掛け本はいくつもありますが、『世界でいちばん透きとおった物語』はその究極本といってもいいと思います!

手のこんだ仕掛けと、なによりラストがすばらしいなと。タイトルとともに、練りに練られた仕掛けになっています。

ネタバレがわかったとしても、その感動は本を手にとってこそなので、ぜひ一読してほしいと思います!