朝井リョウには、『何者』『桐島、部活やめるってよ』といった数々の人気作があります。さわやかな青春ものと思ったら、とんでもない。人間の心にある嫉妬や迷いなど、複雑な、でもまちがいなく誰にでもある感情を描いているんですね。
朝井リョウの個人的ベスト5を含めて、カテゴリー別におすすめ作品を紹介したいと思います!
朝井リョウ個人的ベスト5!最高傑作は?
朝井リョウ作品で、個人的ベスト5を紹介していきます!
1位『正欲』
まずは本作を紹介したいです。多様性が称賛されるなかで、その枠にすら入れないマイノリティの生きづらさを描いています。
息子が不登校になった検事・寺井、寝具売り場で契約社員として働く夏月、初めての恋に気づく大学の学祭実行委員の八重子。ある人物の事故死をきかっけになり、関係のない人たちの人生が重なっていきます。
読み終わったとき、また冒頭から読み返したくなる。登場人物たちの思いに触れたくなる作品。朝井リョウの最高傑作だといえると思います!信頼できる作家だということを強く感じることができるでしょう。
稲垣吾郎、新垣結衣で映画化されています。
2位『桐島、部活やめるってよ』
傑作です!
県立高校で、衝撃的な話が飛び込んできます。バレー部のキャプテンである桐島が、部活を辞めるというのです。残されたバレー部のメンバーや、桐島の友人や彼女だけではなく、学校中に影響を及ぼしていく。
これって学校内での価値観が崩れるということで、そのときにどう向き合うのかが描かれているんですね。桐島がいっさい出てこないのも秀逸。文学的な味わいがあります。
映画も神木隆之介主演ですばらかったです。
3位『何者』
就職活動を控えた5人が、対策をしようと集まります。しかし、SNSや面接で発する言葉から、それぞれのどす黒い感情が見えていくる。
就職という、感情が揺さぶられる状況で、人間の裏側を見せていくんですね。タイトルの「何者」という言葉が、常にまとわりつく。
映画は、佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之と、今からみるとさらに豪華キャスト。こちらも必見です!
4位『死にがいを求めて生きているの』
「死ぬまでの時間に役割がほしいだけなんだよ」
植物状態の智也と、その友人である雄介。毎日を同じようにくり返す看護師、クラスでうまく立ち回る転校生、注目を浴びたい大学生、中年テレビディレクターと、交わっていくことで、ある真実があらわになっていく。
人間にとって役割とはなにか?競争社会で生きていくことはなにか?を突き詰めていきます。
原始から未来までを複数作家で描く「螺旋プロジェクト」の1作ですが、本作だけで読んでもまったく問題ありません!
5位『スター』
尚吾と紘は、新人の登竜門である映画祭でグランプリを受賞する。2人は大学を卒業してから、名監督の弟子入りとYouTubeへの世界へいく、という道を選びます。
そこから、質と量の話にもなってくるんですね。映像作品をどんどん作っていける環境にあるのか。スターとはなにかという本質に迫っていきます。冒頭、インタビューから入る構成もいい。
朝井リョウおすすめ本
ベスト5以外でおすすめ作品を紹介していきます。
『世界地図の下書き』
養護施設「青葉おひさまの家」を舞台にした作品。小学生の太輔は、両親を事故で亡くして、心を閉ざしていましたが、施設の仲間によって打ち解けていく。子どもたちの希望と苦悩を描いた作品です。
『どうしても生きてる』
生きづらさを抱えた人々を描いた短編集。性別や容姿、雇用といった、テーマにフォーカスしていきます。さまざまな立場での食い違いを描いてます。
『チア男子』
大学生の男子のみのチアリーディングチームが誕生!まっすぐな青春もので、人を応援することってなんだろう?ということもわかる作品です。
『少女は卒業しない』
校舎の取り壊しが決まった廃校。少女たちによる7つの別れと旅立ちの物語です。連作短編集で、どれもが読ませる内容です。
『もういちど生まれる』
10代ならではの葛藤や苦悩が込められていて、プライドとか焦りとか、こういう感情があるなぁの連続です。短編ですが、登場人物たちがつながりがあり、立体的な世界観が広がっていきます。
さまざまな視点から浮き彫りになること
朝井リョウの上手さは、複数人物の視点で、それぞれがリアルな感情を描けること。だからこそ、共感できる点が多く、現実の社会でも起こることになっているんですね。まちがいなく現代を描くうえで、最先端をいく作家の1人です。映像作品とはまた違った味わいがあるので、気になった作品から手にとってほしいと思います!