たかゆうの読書日記

本が好きです。読んだ本を中心に、映画・マンガ・テレビなどについても言及できればと思います。

『沈黙の艦隊』マンガ原作を徹底的に解説!あらすじ・ネタバレ・魅力まとめ

すさまじい作品!

『沈黙の艦隊』は、海洋サスペンスものとしても秀逸なのですが、国家論であり戦争論であり人類論になっているんですね。重厚すぎる…。

2023年9月29日に映画化。Amazon primeが制作した初めての日本映画ということになります。大沢たかお、玉木宏、上戸彩ら、豪華キャスト陣。防衛省・海上自衛隊との協力体制で、かなり気合いが入った映画になっています。

さらに、2024年2月からドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』全8話として、Prime Videoにて配信開始。

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原作のマンガは、単行本で32巻あります。しかし、中だるみなく、どこまで話を広げるの?と、あわあわとしながら読み切ってしまう。マンガ『沈黙の艦隊』のあらすじと魅力を紹介していきます!

※ネタバレになりますので、注意してください。

かわぐちかいじの『ジパング』についてはこちらで徹底解説しています!

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『沈黙の艦隊』①原子力潜水艦による独立宣言

壮大な物語の幕開け。

アメリカと日本で極秘裏に開発した原子力潜水艦「シーバット」が、艦長・海江田に乗っ取られます。海江田は、独立宣言して「やまと」という国家を名乗るのです。

「これは我々が真の自由を得るための避けることのできない戦闘なのだ」 「牢獄の庭を歩く自由より、嵐の海だが、どこまでも泳げる自由を私なら選ぶ!」

日本はやまとを擁護。竹下首相はやまとと自衛隊を国連の元にするとしました。

アメリカ軍は、テロだとして、日本の占領を要求します。原油の輸出入の完全封鎖、企業間の株式の持ち合い禁止、銀行の解体、教育制度の改革、国防力の削減、現政府の解体。このあたりアメリカの怖さを感じさせます。

やまとは国家なのか?

海江田は原子力潜水艦を国家「やまと」と宣言します。しかし、原子力潜水艦を国家といえるのでしょうか?

国家とは一定の領土を持ち、そこに居住する永続的人民がいて、それに対して有効な支配を及ぼす政府を持った政治的地域団体。

そうすると、「やまと」は国家といえるわけです。人間に安全を保証する最高の形態とするならば、最高の国家と呼ぶことも可能です。

『沈黙の艦隊』②アメリカ軍VSやまと

アメリカ軍は攻撃を仕掛けますが、やまとは専守防衛を貫きながら敵艦を撃破。やまとは、ニューヨーク沖へ向かいます。海江田は地球をひとつの国家とするという考えのもと、政軍分離、超国家軍創設を訴えます。さらに戦闘終結宣言して、乗員募集も開始するのです。

海江田の動きが、予測不能だけど理にかなっているんですね。このあたり、エキサイティングな展開でした。

『沈黙の艦隊』③日本の政治家による四者会談

海江田の動きにより、国内の政治家たちも主義主張を打ち出します。竹下首相が新党立ち上げての選挙で、四者会談が開催されます。かなり読みごたえありです!

政治家たちがカッコいいんですよね。それぞれ日本を世界をよくするべく動き、議論を重ねる。主義主張は違えど、芯がある。目指すべき理想がある。

新民自党、日本民自党、鏡水会、革新連合、四者の考えをまとめてみます。

新民自党:アメリカ頼みを警告

竹下が立ち上げた新民自党は、アメリカ一国の軍事力に頼っては危険というスタンスです。真の国際紛争解決は国家レベルの政治経済行為から切り離された私心なき軍事力でなければならない、と主張します。

そのために常設国連軍を創設しようとします。すべての国家が支持する世界正義が存在するというわけです。強力な警察力によって、世界平和を成し遂げる。でなければ人類は永遠にナショナリズムの束縛から逃れることができないと、断言するのです。

日本民自党:アメリカと一致団結すべき

日本民自党の海渡は、日本が信頼できる国はアメリカ以外にないとします。真の安全保障は互いの正義を理解して利害の一致した国同士でなければ成立不可能だと、竹下の考えを否定します。

鏡水会:軍備永久放棄

鏡水会の大滝は、軍備永久放棄を強く訴えます。そのために、「やまと保険」の成立にも動きます。海江田率いるやまとに、何かあった場合、保険で世界の軍備永久放棄を実現しようというのです。イギリスのライズ委員会に交渉。国民に安全保障税を課して、自衛隊を放棄することを主張します。

革新連合:国連軍は世界大戦を誘発する

革新連合の河之内は、やまと保険によって世界規模の軍拡が行われると、否定します。資本主義は安全保障とならない。国連軍は世界大戦の誘発につながるとの考えです。

国連に領土はない。国連の決議に対立する国が大国であったら?複数国家であったら?国連軍を編制する国々と、対立する国々の戦争となると、主張するのです。

『沈黙の艦隊』④政治サミットでの緊迫したやり取り

そして、世界も動き出します。政治サミットで、7カ国の首脳が集まります。

アメリカのベネットは、海江田の存在を否定します。権力の座にある者は確信犯であることからまぬがれない、核の永久放棄を獲得するならば、大犯罪人は一転して歴史の勝者となると。

竹下が目指す国連のみが強大な軍事力を持つ状態は、否定されました。ベネットは世界を統合するべき、その力があるのはアメリカのみと、他国にプレッシャーをかけていきます。

同時に、情報サミットが巻き起こる。アメリカメディアを招き入れて、やまと内部を世界に放送したのです。

さらには、海江田の目論見によって、原潜サミットが起こる。英国タービュレント、仏エムロードらが海上に集結します。

『沈黙の艦隊』⑤海江田が目指す世界のあり方とは?

そしてついに海江田が目指す世界の在り方が示される。「沈黙の艦隊」の意味が明かされていきます。

英国タービュレントの艦長は、原潜の人類史における意味を語ります。核の報復を恐れる。先制核攻撃をすることを前提として、敵国の核施設を破壊することが必要。だが、原潜は深海にあるため破壊されないというわけです。

海江田は、「ザ・サイレント・セキュリティー・サービス・フロム・ザ・シー」を実現するといいます。超国家原潜艦隊としてあらゆる国家から独立することが大前提。すべての国を照準に定め、いずれかの国が核を使用したとき、その国に向けて核ミサイルを発射する。核を持たぬ国を含めて、すべての国が核の抑止力を手にする。

これが「沈黙の艦隊」というわけです。

『沈黙の艦隊』⑥海江田が国連へ

そして、海江田は国連の地へ。

「人類は戦争による絶滅を受け入れる生物ではない」

ベネットと対話するが、やまとは米軍の一撃で、海へ沈んでいきます。そして、議場で海江田は凶弾に倒れてしまうのです。

「議事を止めるな。世界が動いている」 「地球のことは海から解決するほうがいい」

そう言い残して、病院へ運ばれて、海江田は脳死状態に…。ベネットと海江田は、「人間は悪意より善意が上回っているという一点のみ合意した」のですが決裂したのです。

『沈黙の艦隊』⑦海江田の仕掛け

海江田は、この事態も予測して、手紙を残していました。そこには「独立せよ」の一言が記されていました。

「世界がカイエダを感じている。カイエダはすべての武器を失ってもそのときは心音によってでも何かを伝えてくる人間だと信じられている」

ベネットは海江田を認めざるを得ませんでした。

そして人類は、「沈黙の艦隊システム」は否決するものの、世界政府を承認。海江田の存在は大きな影響を与え、核廃絶し戦争をなくすため、世界秩序は新たな形を模索していくことになります。

『沈黙の艦隊』は圧倒的な作品!

いやぁ物語を簡単にまとめていきましたが、どうでしょうか。海洋サスペンスだけではなく、国とはなにか?政治とはなにか?そして人類はどのように進むべきか?さまざまな奥深いテーマが内包されていることがわかるでしょう。

マンガ作品の重厚さを詰め込んだ映画作品含めて、『沈黙の艦隊』を今こそ読んでほしいと思います!